世界遺産の山を歩く 山楽部

2010/06/15

そうだ 大台ケ原、行こう。【その2】

日出ヶ岳頂上でソロが故の『負のオーラ』を纏いながら…
ソロの寂しさがじわじわと身を焦がし始めてきたところから話は再開 (⇒①へ


次の目的地は向かいの正木峠へ。






日出ヶ岳に登り掛けたあたりから太平洋側の暖気によりガス発生。
見る見るうちに東側斜面からガスが吹き上がってくる。
正に『山の天気は変わりやすい』を絵に描いたような山。



シロヤシオが所々咲いている丁寧な木道を登る。
正木峠のピークまではゆっくり登れば10分位。
なかなか雰囲気のある環境負荷の少ない整備された遊歩道です。
誰もいないのでザックをデポして辺りを周遊。


ここ正木峠はもともとトウヒの森。
昭和34年の伊勢湾台風の直撃でことごとく薙倒され、50年経った今でもこの有様。
倒木により森が開かれたことで地を這っていた苔は乾き、ミヤコザサは陽を受けることで、
グングン繁殖し、さらに笹を餌にするニホンジカは個体数を増やし・・・現在は負のスパイラル。
皮肉にも今ではこの正木峠の立ち枯れが大台ケ原のイメージの象徴。

これだけ乾ききった林床では苔も生すことができない。
トウヒの幼芽は苔に着床することにより生育していく。
そのサイクルが絶たれた末路が現在の大台ケ原における問題なのである。



またしても環境負荷の現実を目の当たりにすると考えさせられることばかりである。
登ってここにこないと現状は把握できない。
テレビや記事で知ることはあっても、自分の目で確かめない事には環境破壊は身に持って体験できない。
これから先この森がどう再生していくのか、そして“地元”の人間としてどう係わっていくかも考えさせられる。


そうこうしていると、またまたガスが吹き上がってきた。
次に目指す正木ヶ原は瞬く間に霧の中。


そりゃそうです。
下界の熊野灘は雲海です。


ガスの中をトボトボ歩いて下っていたら、ササを歩く足音が・・・。

( ; ゚Д゚)・・・いた。

鹿を見ないと落ち着かない体になってんのかな(笑)

歩くこと20分。正木ヶ原に到着。
そして正木峠を振り返ってみる。


この日の天気と同じで何かモヤモヤしたものを抱えながらの行程になってしまった。
こうやってこの山を歩いてることでさえ環境負荷になっているのだろう。
尾鷲辻を自問自答しながらトボトボ歩く。
程なくして牛石ヶ原へ到着。

正面に見える石は『牛石』といい、魑魅魍魎を閉じ込めてあるそうな。


そんな殺伐とした雰囲気を取り払うような牧歌的お馴染みの風景。



そして忘れてならないのは、牛石ヶ原には日本史に名を残す大物が。
日本の初代天皇・神武天皇
何故ここから熊野灘方面を見下ろしているかというと・・・。

神武天皇が東征の際、大和へ攻め入る。
しかし、難波で豪族に敗れ大和への略路を絶たれてしまった為熊野灘へ回り込み、
ここ大台ケ原を抜け大和へ攻め入り畝傍山の麓で即位し、日本最初の天皇となった
エピソードがあるのです。
そして左手の杖尺にとまっているのが神武天皇を案内したとされる、かの有名な三本足のカラス【八咫烏】


またここでも感慨にふけってしまい、気がつけばまたガスが・・・。
先を急いで大蛇向かわなければ霞に誘われどこかへ連れ込まれてしまいそうな(笑)
これだと大蛇嵓もきっと一面乳白色の世界なんだろうな。

ほら。
見渡す限り一面真っ白。
『まぁここはこんなもんだ』と開き直り分岐へ戻る。

戻る道中、森は一層の霞を纏ってきた。


『ダダイジョウブ・・・?』みたないな眼差しを向けるお嬢さん。

さーて分岐へ戻ってこれからはシオカラ橋まで延々下り道を行く。
この時点で16時過ぎなのでピッチを上げて戻らねば。

でもここから続く新緑の森が足の裏に根を生やしてしまう。
立ち止まりシャッターを押す。

このガスこそが大台ケ原の代名詞。
大台ケ原は昔から“魔の山”とされてきたところだけに…。

でも晴れた時に見せる新緑の鮮やかさにハッとする。

 シロヤシオも綺麗に咲いている。
この森の中では余計に映える。

足早に駆け抜けるはずがこの森の中で相当時間を食ってしまった。
見渡すといよいよ薄暗さが増してきた。
ガクっとブルっとくる。

命からがら最高の湿度地帯を抜け、谷底のシオカラ橋へ。
ここからがまた急登がつづく。
清流を眺めているほど時間の猶予はないのだ。急げ俺。



橋から30分程休み休み登るともうすぐ駐車場だ。
登るにつれてガスが晴れて夕暮れ時の空に。


駐車場へ戻ったのは18時過ぎ。
車へザックを積んでゆっくりしていると見る見る陽は暮れていく。
車も3、4台しか停まっていない。

ひとまずソロでの山行だったわけだが、大台ケ原みたいな日頃人の多いところでこの心細さ。
自分でも笑っちゃうくらいに何度後ろを振り向いたことか。
そしてハエの羽音がお経に聞こえてくるもんだから少々気持ちが悪い。

日の入りは19時9分。
もうすぐ陽が沈む。
吹き上がるガスに陽が遮られる。


暮れ行く山々の空気を吸おうと車を停めた。
清涼な引き締まった空気だ。
少し肌寒いので上着を着よう・・・

『あれ?ジャケットないぞ・・・』

(;`∀´) お、落としてきたw


ビジターセンターへ戻って届出そう・・・


λ....(微妙につづく)


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